2022年首相決定1号とは?③

~ベトナムで進むカーボンニュートラル政策と市場参入機会~


●2022年首相決定1号を読み解く② エネルギー消費の多い地域は?

  前の記事「2022年首相決定1号を読み解く① エネルギー消費の多い部門・産業は?」こちら

 2022年首相決定1号 の対象企業リストを地域別に見てみると、ハノイ、ホーチミンといった主要都市や工業団地が集積する経済重点地域が、企業件数、エネルギー消費量ともに上位に挙がる。一方で、1社あたりのエネルギー消費量が大きいハティン省(企業数15社、1社あたり約31万TOE)、カマウ省(企業数3社、1社あたり約60万TOE)や、企業数は多いが1社あたりのエネルギー消費量は小さいビンズオン省(企業数249社、1社あたり約0.7万TOE)などのように、地域ごとの特徴もみられる。これは、地域により集積する産業が異なるためである。ベトナムで、ある特定の産業や分野のGHG排出を削減しようとする時、まずはどの地域に分布しているのかを把握することが有効だ。その上で、その産業、その地域に適したエネルギー対策が、例えば省エネルギーであるのか、低炭素な燃料への転換であるのか、電化の促進であるのか…等の検討を進めることができる。そのようにして1つの地域で実績ができれば、同じ産業が集積する他の地域への展開も考えやすくなる。



対象企業の年間エネルギー消費量TOP15地域(企業数、1社あたりエネルギー消費量)

(出所:2022年首相決定1号を基に当社作成)

(出所:2022年首相決定1号を基に当社作成)

対象企業の年間エネルギー消費量(商工部門のみ、エリア別)



 ベトナムでは、インベントリ制度の本格稼働と企業による排出削減努力の義務化に向け、この記事で紹介したようなエネルギー消費量の多い産業・業種や地域でGHG排出削減対策・規制が一層加速すると思われる。現在、業種別の環境基準が改訂作業中であるため、これからの動向にも注視が必要だ。ただし、個別の企業が計画を策定し、目標を達成するための方策は、まだまだ検討の途上にあると言える。ベトナムは国を挙げて海外からの技術を誘致しており、特にカーボンニュートラルに貢献する技術・知見の移転が望まれている。近年は中国、台湾、韓国や欧米企業からの技術移転や投資活動も活発だ。ベトナムのカーボンニュートラル市場に食い込んでいくためには、産業・地域の特性や個別の事業所の状況などを踏まえ、現地のニーズ応じた適切な対策・技術・サービスを移転することが重要である。